長崎新聞 雲仙普賢岳大火砕流から10年
【提言】災害に学ぶ
43人の死者、行方不明者を出した雲仙・普賢岳の大火砕流惨事から来月3日で丸10年を迎える。
犠牲者の遺族、住民が味わった苦汁の日々は、
阪神大震災や北海道・有珠山、伊豆諸島・三宅島の噴火災害への教訓として生かされたのだろうか。
普賢岳の噴火当時から被災者救済や被災地の復旧、復興に携わった各界の6人に、
全国に伝えるべき教訓と課題を聞く。
【第四回】2001.5.31.記事
福崎 博孝さん(弁護士)
島原市船泊町出身。46歳。
1981年に県弁護士協会に入会後、豊田商事事件やじん肺訴訟など
主に消費者関連の事件を中心に携わっている。
雲仙・普賢岳噴火災害以来、警戒区域設定に伴う住民の損失補償制度の創設などを指摘してきた。
対策基金創設は成果
被災者支援へ法整備を
Q:雲仙・普賢岳噴火災害は、その後の災害対策の教訓になったのか?
大きく二つの側面がある。
第一は、
同災害で設定された警戒区域が、
有珠や三宅の火山災害では損失補償の発生を避けたためか設定されず、
逆の意味で教訓になってしまった。
これは行政の後退を意味し、緊急対策として大きな問題がある。
一方、
普賢岳災害の被災者対策の充実を求める動きの中で、
1998年に被災者生活再建支援法が成立し、
教訓はそれなりに生かされた。
Q:被災者対策などで実現した成果は?
地元で「特別立法」を求める運動が起こり、
雲仙岳災害対策基金が創設された。
復興は「被災者の自助努力」が行政の建前だが、
基金という形でワンクッションを置きながらも
国の財源を使って住宅再建助成などの各種支援が行われた。
災害対策基金の創設が前例化したことは、
その後の災害に貢献したと言える。
Q:対策の問題点は?
農林水産業には手厚い支援が行われたが、
商工業にはそれがなかった。
農林水産には各種制度資金などの手だてが従来からあり、
災害下でその質量を広げて救済策が行われた。
しかし、商工業者を対象とした同様のシムテムがなかったため、
支援が不十分だった。
結局、既成概念の枠を破ることはできなかった。
Q:災害対策の課題は?
日本の災害対策は、災害のたびにモザイク的に対策が取られ
個々バラバラで整合性がない。
応急対策、復旧対策、復興対策という時間的流れを前提とした
災害対策のシステムの構築が必要だ。
そのシステムの基本として、
被災者支援のための災害対策基金制度を法的に整備する必要がある。
Q:被災地・島原の課題は?
今、島原に必要なのはお金を落とすことではない。
人をいかに呼び込むかが重要。
国・県への依存体質を感じるが、
行政改革の流れもあり、今後そうはいかないことも考えられる。
全国的に活躍する国見高校サッカー部とタイアップした
「サッカービレッジ」づくりなど、
おまり資金をかけずにやれることはあるはず。
いろんなアイデアを出し合い
自己責任で頑張らなければならない。
(聞き手:報道部 三浦祐二)