長崎新聞 雲仙普賢岳大火砕流から10年
【提言】災害に学ぶ
43人の死者、行方不明者を出した雲仙・普賢岳の大火砕流惨事から来月3日で丸10年を迎える。
犠牲者の遺族、住民が味わった苦汁の日々は、
阪神大震災や北海道・有珠山、伊豆諸島・三宅島の噴火災害への教訓として生かされたのだろうか。
普賢岳の噴火当時から被災者救済や被災地の復旧、復興に携わった各界の6人に、
全国に伝えるべき教訓と課題を聞く。
【第五回】2001.6.1.記事
旭 芳郎さん(島原ボランティ協議会)
南高南有馬町出身。47歳。
島原市の地域活性化グループで活動していたが、
雲仙・普賢岳噴火災害の大火砕流の直後、
雲仙岳災害ボランティア協議会(後に島原ボランティア協議会)を設立、
事務局長を務める。
北海道南西沖地震(1993年)、阪神大震災(1995年)、
有珠山噴火災害(2000年)などで現地入り、
災害ボランティアの先駆けとして活動中。
社会全体で活動支援を
組織間連携の必要性を痛感
Q:この10年間、全国で噴火や地震など自然災害が続き、
災害ボランティアに注目が集まった。
原型は、雲仙災害ボランティア協議会にあったと思う。
北海道南西沖地震では
「島原の恩返しは今しかできない」と奥尻島に飛んだ。
阪神大震災では(ボランティアを指揮し、行政とタイアップする)
ボランティアコーディネーターが重要な役割を果たしたが、
ボランティア同士や行政、避難住民との間で摩擦が生じたこともあった。
日ごろからボランティア間の連携と組織化を図る必要性を痛感した。
Q:組織化の進み具合は?
昨年1月、全国災害救援ネットワーク(Jネット)が発足した。
災害時はボランティア活動の調整や、行政との連携などに当たり、
長期的な活動プランも立てていく。
日ごろから活動資金の提供を呼びかけ、
災害ボランティア研修会を開くのも大切な役割だ。
Q:災害発生時、ボランティアがすべきことは?
まず、情報の把握。
災害が起こると、現地入りしたJネットの先発隊が
必要な情報をインターネットなどで発信する。
ボランティア活動をしたい人は、それを確認してから考えても遅くない。
昨年の有珠山噴火では、
必要なボランティア数はピーク時でも120人程度だった。
現地ボランティアが多ければいいのではない。
むしろ、資金援助をする人や、ボランティア活動で職場を休んだ人の仕事を
フォローする同僚などがいなければ、十分な活動はできない。
社会全体で、できることをやればいい。
すそ野の広い「ピラミッド構造」で活動をそれぞれ支えてほしい。
Q:普賢岳噴火災害での活動を振り返ってみてどうか?
今思えば、反省しきりでだ。
「取りあえず来てほしい」とボランティアを受け入れておきながら、
活動の基本的な骨格がなかった。
ただ、災害や避難生活が長引いたら
被災者への「心のケア」が必要になるという「経験知」は、
阪神大震災などで生かされたと思う。
(聞き手:報道部 田渕徹郎)