災害ボランティアの風

十年間の普賢岳(やま)からのメッセージ


島原新聞 平成13年6月2日(土)記事より


島原ボランティア協議会が4000部
一般希望者にも無料で(送料負担)


43名の尊い犠牲者を出した普賢岳噴火災害の大火砕流惨事から
3日で丸10年を迎えるにあたり、
同災害を機に発足した「島原ボランティア協議会」(宮本秀利理事長、県内35団体)が
1日、10年間で得られた体験や智恵など活動の歩みを記した記録誌
「災害ボランティアの風〜普賢岳(やま)からのメッセージ〜」を発行した。

同協議会は6.3.大火砕流発生直後の平成3年6月5日、
島原半島の地域おこしグループ「十七会」を中心に
「雲仙岳災害ボランティア協議会」を設立。

翌年名称を変更、平成11年にはNPO(特定非営利活動法人)も取得した。

同災害下で全国からのボランティアの受け入れや救援物資の仕分け、
土砂の除去作業などに携わり、
その後、北海道南西沖地震や阪神大震災、有珠山噴火など
全国各地で相次いだ自然災害の被災地で活躍。

「全国災害救援ネットワーク」の設立にも貢献し、
昨年秋には国内初となる全国ボランティア大会の島原市開催に力を注いだ。

噴火災害の発生から10年。
当初から実際に災害ボランティアに携わった人たちでさえも
時の経過とともに記憶が薄れつつあることから、
10年の節目を機に、2年前から記念誌編纂の構想が持ち上がった。

当初は災害ボランティアに関するマニュアル的な記録誌を作成する計画だったが、
昨年の有珠山噴火での活動の際、被災地ごとに必要な取り組みが異なることを痛感し、
マニュアル部分は当初の半分から5分の1程度に圧縮。
その代わりに第三者の目や実際に活動した人たちの手記を通して
災害ボランティアに取り組むにあたっての基本姿勢などを色濃く盛り込んだ。

満行豊人・同協議会副理事長(63)を編集委員長に
旭芳郎・同協議会事務局長(47)ら5人が編集にあたった。

第1章は、
災害下で災害ボランティアの分析のため密着取材をしていた
当時の大学院生、室井研二氏(福岡国際大助教授)と山下亜紀子氏(岩手大講師)の
両氏が「島原ボランティア協議会の10年を振り返って」と題して
活動の歩みや問題点を指摘。

第2章は、
各種民間団体やマスコミ、行政など32人の災害に関する手記を掲載。

第3章は、
「災害ボランティアの基本思考」と題し、実際の活動・体験で感じたことを通じ、
災害ボランティアに参加するにあたっての基本的考え方などを示し、

さらに
第4章では、
全国大会の報告や復興状況の写真などでまとめた。

旭芳郎事務局長は
「『郷にいれば郷に従え』が災害ボランティアの基本。

 他の被災地での具体的な行動にあたっては
 臨機応変に対応しなければならないことを痛感し、
 当初のマニュアル作りの構想から、
 手前味噌ではなく第三者の目を重視した記録誌とした。

 災害を乗り切るため、復興・再生を地域の問題として
 地元住民が一体となって考えられるよう支援しなければならないという、
 災害ボランティアのあり方を示したかった。」
としている。

A4判、264ページ。
県の雲仙岳災害対策基金から600万円の助成を受け、4000部を発行した。

無料。
県内には社会福祉協議会を通じて全市町村に配るほか、
有珠山や三宅島の被災地にも送付する。

一般には送料の負担で送る。

問い合わせは同協議会(0957−62−6014)へ