「有珠山だより」その3


島原ボランティア協議会 高木浩徳 氏    島原新聞 平成12年5月16日


仮設入居始まる

広がるボランティアの輪

5月12日(金曜日)
さきのレポートで簡単に触れていたように、
5月5日から仮設住宅への入居が始まりました。

この仮設住宅は壮瞥町滝之町に初めて完成した鉄筋プレハブ造りのもので、
一人用が6畳(16戸)、二人〜五人用で6畳二間(58戸)、
五人用が6畳二間と4.5畳(10戸)となっていて合計85戸です。

電化製品もそろい、ストーブ、テレビ、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機が備えつけられています。
トイレは水洗で、電話とガスコンロも完備しており、すぐにでも生活できる環境が整っいてます。

入居期間は二年間、家賃は無料、光熱費は入居者が負担するそうです。

壮瞥温泉に自宅があり、生まれたばかりの乳児を抱える若夫婦は、
「避難先で不自由だった子育ても気兼ねなくできます。
台所もちゃんとあるので、食べたいものも作ってあげられ、
買い物も伊達市まで足を延ばせば不自由はありません。」と
喜びの言葉を語っています。

また、壮瞥町のある中学生は、
「避難所暮らしでかまってやれなかった犬とも思い切り遊んでやれます。
テレビで思いっきりバラエティ番組を見たい」と
仮設住宅に入れて満足そうな様子でした。

一方で、一ヶ月を超える避難生活に人々の疲れと焦りはつのるばかりのようです。
このためボランティアによるさまざまなイベントが開催され、
人々に娯楽や休息、やすらぎやうるおい、元気や勇気を提供して励ます活動が盛んです。

5月の連休期間中はとくに多彩な盛り沢山の行事が目白押しでした。
調理スタッフによる臨時屋台での味のボランティア、チェロの演奏会、
ハーモニカとエレクトーンの演奏会、北海道警察音楽隊のパレード、
こどもの日の五日前後には、避難所の子どもたちに楽しんでもらう「子どもフェスティバル」
「噴火に負けるなちびっ子縁日」などがあり、
子どもばかりではなく、大人もそしてボランティアのメンバーもともに充実したひとときを分かち合い、
笑顔の輪が広がったゴールデンウィークでした。

その後も、避難所でのパネルシアターと大型紙芝居の上演(8日)、コンサート(12日伊達市体育館)など
催しがあり、わたしたちボランティア仲間にとっても張りのある毎日が続いてます。

見通しの聞かない噴火災害に対する住民の不安を少しでも緩和させようと、
関係機関によるいろいろな試みもされています。

新聞報道によると、
壮瞥町では6日に、火山噴火予知連有珠山部会長の岡田弘教授と宇井忠英教授(ともに北海道大学)を
招いて噴火活動の現況報告会を行っています。
ヘリコプターからのビデオ映像やスライドによる説明を聞いたあと、質疑応答があり、
今後の見通しに関する住民のみなさんの質問に対して、
岡田教授が
「噴火近くの団地については損傷が非常に激しく、
金毘羅山噴火口付近の洞爺湖温泉の一部については集団移転も検討しなければ」
との見解を示すと、
涙を浮かべる人たちの姿も見受けられたそうです。

なお、道議会では、普賢岳噴火や阪神大震災にならった災害対策基金の創設について
協議がなされていますが、昨今の超低金利の中では
基金の運用益を使った事業の効果は期待できないという考え方が根強く、
この基金設立については今のところこれといった進展は見られていないようです。