「災害報道には十分な検証必要」

 長崎新聞 コラム「記者の目」  平成12年6月29日   島原支局 山田貴己


四十三人が犠牲となった雲仙・普賢岳噴火災害の大火砕流惨事を教訓に
今月、災害と報道を考える第九回雲仙集会(日本新聞労連九州地方連合など主催)が
島原市内で開催された。

災害報道についてあらためて振り返る機会に恵まれ、
この災害で得た各分野の教訓を新世紀につなげるには、
報道内容を含めた十分な検証作業が必要なことを痛感した。

講師の渡辺一徳・熊本大教授は災害報道について、
読者らの興味、関心にこたえようとするあまり
「インパクトの大きい方向に比重をかけて報道する例が多い」と指摘。

前新聞労連委員長の服部孝司氏は
「マスコミ同士の取材競争は、被害者を傷つけ、多くの誤解を招きかねない」
と警鐘を鳴らし、
「現象の裏側にまで突っ込み、隠れた事実を拾い上げ、
そしてはぐくんでいく使命がマスコミには課せられている」と」述べた。

大災害に限らず、社会に大きな影響を及ぼす事象が発生する都度、
「取材競争」の激化による人権侵害などが問題となり、世論の批判を浴びる。

官庁の発表頼みの横並び取材では、読者が望む真実の報道ができないのも確かだが、
取材される側、報道される側の立場や気持ちを忘れた報道姿勢は明らかに間違っている。

噴火から十年。
災害や復興に関するこれまでの報道を被災者らがどう受け止めてきたのか、
現場の記者としてしっかり自覚するための仕事を続けたいと思う。